
欠かせない永代供養
成果を公表し市業界のリーダーシップ確立を目指して困難な問題の解決を迫られたとき、考えられる異種の方式を並べるやりかたは、Tの常套手段だった。
かつて一九七0年代に世界を揺るがしたアメリカのマスキ-法(一九七O年大気汚染防止法)をクリアさせるために、排気浄化について期聞を限られた法制がなされたとき、そのシステムを開発するのに並列的な試案を掲げた。
マスキ-法の時代、Tは、いろいろの方式による排気対策エンジン並列的に発表し、それを発売した。
『複眼の思想』というスローガンで飾られていたが、事実は、まだ本命となる技術に対する見通しがない時点での、苦しまぎれの手法、であった。
当時、H技研側はエンジンの燃焼室内に空気を吹き込むことで燃焼温度を下げ、窒素酸化物(NOX)の排出量を抑えるCVCC(複合渦流調速燃焼)を独自に完成させ、いちはやく排気規制に対してそれをクリアできる、と公表した。
M(当時の社名は東洋工業)やHも独自の方法でクリアできると発表。
しかしTは、研究は進められつつあったが、まだ完成の域に達していなかった。
しかし、それではすまされなかった。
日本の自動車工業のリーダーとして、他社でできることができない、というわけにはいかなかったのである。
当時を回想してT英二社長(中J時、現在は名誉会長)は、自伝『決断』のなかで、こんなことを書いている。
「排出ガス規制でTに限った問題点は、生産車種が多かったことである。
ある車種が規制数値を達成し、性能が落ちないことが証明されても、他の車種に応用できるとは限らない。
だから一車種や二車種しか生産していないメーカーが、『うちはできました』といっても、Tができないということも起こりうる。
しかも初めてやることだから、クラウンで成功してもカローラに応用できるとは限らない。
それぞれの車に合った対策を開発するとなると相当時聞がかかる。
排出、万ス規制には全社あげて取り組んだが、さんが開発したCVCCエンジンがいいと聞けば、会社の而子にこだわらず技術供与を頼みに行ったこともある」この盟国名誉会長の言葉にもあるように、T自動車は非常に多くの車種を抱えていることは現在、でも同じだ。
それらにすべて適合するシステム開発することは難しい。
そこで、いろいろの方式を模索し、出来たものからそれを生産車に展開していく、という方法を採用していこうというのは、当然の帰結といえるだろう。
従来型のエンジンの燃焼室を改良して、ガソリンを希薄な状態で燃やす『リ-ンパ-ン』は、各社がどこも研究しているテ-マである。
二一菱自動車における『GDI』や、H技研のいろいろのタイプの『-どV』などがあり、T自動車における『D4』も原理はほぼ同じである。
これまでの技術では着火しない燃料を希薄な状態にしながら、点火プラグに近い部分に燃料を直後噴射させてやり、そこで燃えた火種によって、シリンダー全域に与在する薄い混Aど丸に燃えひろがらせよう、というものだ。
電気自動車については、もっとも古い低公害システムだが、これは一に掛かって電池の性能に依存している。
自動車の動力用として、充分な容量持つものが、軽く、しかも安い。
これらの技術とともに、Tはこれまでとはまったく異質の、エンジンと電気モーターとを組み合わせて動力源とする方式への模索を続けていた。
それは、いままでのT流とはひと味違っていた。
より困難なものを他社に先駆けて公開し、それを発売することによって、業界のリーダーシップを確立しようとする積極的な方法ということができよう。
それこそが、ハイブリッドシステム、であった。
ハイブリッドシステム自体の原理は、決して目新しいものではないが、それは研究室段階での話、であって、世界中の自動車メーカーでも現実に市販車に展開するまで技術商て高まってはいないというのが、大方の見方だった。
それだけに、技術面でこれまではとくに優佐に立った実績のないTが、いちはやく完成を公表したことに、人びとは衝撃を受けたのは無理のないところだった。
では、ハイブリッドシステムとはいったいどのようなものなのか。
その基奉的な機能について記してみよう。
ハイブリッドの言葉としての意味は、複合ということである。
自動車のエンジンに関するハイブリッドシステムとは、一台のクルマに二種類の動力源を備えることを指す。
通常はガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせる複合動力システム。
このシステムには大別してシリーズ(直列)方式とパラレル(並列)刑宍がある。
前者はガソリンエンジンはもっとも効率の高い領域で定常回転運転を行い、その力で発電機を駆動し、発生した電力によってモーターが車輪を駆動するタイプ。
釜台はエンジンとモーターの双方が車輪を駆動できるようになっており、状況に応じて使い分けるタイプである。
今回Tが開発したものはパラレル型である。
パラレル型は構成が複雑であり、また、エンジンの始動・停止を頻繁に行うため、そのときに起きるショックを抑えるなど技術的に困難な部分が多い。
ただし、ガソリンエンジンで走りながらでも、余分な動力を電気エネルギーとして蓄えることもできるため、上手に設計すればエネルギーの効率の面では、直列型以上の成果そ挙げる噂』とも可能とされている。
その技術的特色は、主たる動力源はガソリンエンジンで、効率の高い回転域では、直接ガソリンエンジンで車輪を駆動するが、このエンジンを使って発電も行い、ガソリンエンジンでは効率の低くなる低速回転域では、モーターで車輪を駆動させるというもの。
走行条件によって、自動的にガソリンエンジンと電気モーターの駆動を切り換える。
発電した電力はバッテリーに蓄え、必要に応じてエンジンの駆動力とモーターの駆動力とを合わせて、より強力なパワーを車輪に伝えることも可能という構成だ。
エンジンは一・五リッターの囲気筒で熱効率の高いアトキンソンサイクル(一般にはミラ-サイクルと呼ばれるもの)で吸気損失、排気損失を抑えている。
最高回転数は四OOOrpmと低く抑えているため、高回転での運転に必要な各部の強度も低減することができた。
ピストンなどの可動部分の重量を小さくし、ピストンリングの張力を低くし、パルプスプリング荷重も低減しているため、エンジン全体の摩擦損失を画期的に低減した新開発のものとなっている。
エンジンの動力を、車輪の駆動用と発電用に分配する遊星歯車方式の『動力分配機構』によって、より効率のよいエンジン運転域を選択して走ることができる。
また、駆動力と.パラレルハイブリッドシステム発電力についてもその配分を効率のよい割合に連続的に制御して、るという利点も見逃すことができない。
車両が停まったときや、ごく負荷の軽い走行時にはエンジンを自動停止させて燃料をカットする。
まれ,減速時には、車輪で発電機を駆動し、発生した電気エネルギーを電池に蓄積する回生機能も備えている。
このハイブリッドシステムにおける電池は、一般的な電気自動車のものとは異なり、エンジンのパワ-の余力を一時的に蓄積しておき、必要に応じて補助的に電気モーターを駆動する役割である。
そのため、外部から充電を行う必要はない。
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